ニュースの概要
株式会社ロゼッタと国立がん研究センター中央病院は、生成AIによる治験関連文書自動作成に関する共同研究の初年度成果を発表しました。研究対象は「CSR(治験総括報告書)」で、プロンプト設計の7割が完了し、約8割の精度で自動作成が可能なツールが構築されたと報告されました。研究成果は、医療・製薬業界における文書業務の生産性向上、コスト削減、患者体験の改善に資するものであり、今後の実用化に向けたさらなる発展が期待されています。
✅ リリース企業名
株式会社ロゼッタ
ニュース内容
背景と目的
ロゼッタと国立がん研究センター中央病院は、2024年4月よりCSR自動作成ツールの研究を開始。本研究は、治験に必要な多くの文書作成を生成AIで効率化し、治験の質とスピードを両立することを目的としています。
研究の概要と成果
- 研究方法:
LLM(大規模言語モデル)にRAG(Retrieval-Augmented Generation)技術を組み合わせ、過去の治験文書データをもとに新しいCSRを自動生成。各章に適したAIモデル・プロンプトを適用し、文章の正確性と信頼性を確保しました。 - システム機能:
治験実施計画書・統計解析報告書をアップロードすると、中央エディタ上にCSRが自動生成。AIチャットボットで修正指示が可能で、根拠文書の参照も明示されることで信頼性を担保します。 - 精度評価結果:
A(そのまま利用可)・B(微修正で可)の合計が約80%、D(利用困難)は0%。外注コスト削減・内製化の可能性を示唆しています。 - 課題と今後の展望:
誤生成やフォーマットのズレなど、約18%は大幅な修正が必要で、プロンプトエンジニアリングの精度向上が課題。今後はCSR以外の治験関連文書(患者説明書・論文・国際文書)などへ拡張予定。
製薬業界での生成AI活用と今後の可能性
ロゼッタ取締役・古谷祐一氏は、製薬業界での生成AI活用実態と、文書業務の自動化により研究者が本来の業務に集中できる環境の重要性を強調。2025年2月にリリースした「ラクヤクAI」など、文書作成をサポートする生成AIツールの活用が加速しています。
出典
🔗 PR TIMES – 〈開催レポート〉ロゼッタと国立がん研究センター中央病院、生成AIによる治験関連文書作成の自動化に関する共同研究の初年度の開発状況を発表
🔗 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000632.000006279.html
AIVISOR編集部より
生成AIが医療・製薬分野に本格的に導入されると言える取り組みです。
治験における文書作成は煩雑かつ時間とコストがかかる業務の代表格。今回の研究成果は、その大部分が自動化できる可能性を示した点で画期的です。特に「80%の精度で活用可能」という結果は、実務適用の現実性を十分に感じさせます。
また、医療・製薬分野における生成AI活用は、法規制や品質担保が求められるため、信頼性と透明性が重要視されます。その点で、根拠となる文書とのリンク表示機能の実装など、実用面をしっかり押さえた設計が評価に値します。
このプロジェクトは、医療AI活用の最前線として、今後の展開にも注目が集まります。今後、治験計画書や国際試験対応、患者説明書の自動生成まで進化すれば、医療現場における負担軽減とイノベーション創出に大きく貢献することでしょう。