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【都庁発】「東京都AI戦略」をサクッと解説!都民の暮らしと行政はどう変わる?

2025年7月、東京都は「東京都AI戦略」を発表しました 。この戦略は、急速に進化するAI技術を、都民の暮らしや行政サービスの向上、そして東京の産業競争力強化にどう活かしていくかを示す重要なロードマップです。

人口減少や都民ニーズの多様化といった課題に直面する中で、東京都がAIをどのように活用し、未来の東京を描いているのか。この記事では、「東京都AI戦略」のポイントを、目次に沿って分かりやすく解説します。

こんな方におすすめ

・自治体や公共機関でAI導入を推進する情報システム部門・DX担当の方
・東京都の補助金・支援施策を活用して事業を拡大したいAIスタートアップ/中小企業の経営者・企画担当者
・産学官連携プロジェクトに関心がある大学・研究機関の研究者/技術移転担当者
・行政サービスの質向上や業務効率化を目指す企画・政策立案部門の職員
・AI人材育成やAIリテラシー向上のプログラム設計を検討している教育機関・企業研修担当者
・透明性・公平性・安全性などAIガバナンスの最新動向を把握したい経営層/リスクマネジメント担当者

目次

東京都はなぜ今「AI戦略」を策定したのか?

東京都がAI戦略の策定を急ぐ背景には、大きく3つの要因があります。

背景①:都民ニーズの多様化と労働力不足への対応

人々の価値観が多様化する一方で、日本の総人口は2008年をピークに減少しており、2050年代には1億人を下回ると予測されています 。東京の人口も2030年をピークに減少し始め、労働力不足の深刻化が懸念されています

このような状況下でも、多様なニーズにきめ細かく応え、質の高い行政サービスを提供し続けるために、AIの活用が不可欠となっています

背景②:生成AIをはじめとするテクノロジーの進化

ChatGPTのような画期的な「生成AI」の登場により、AI利用は爆発的に普及しました 。世界の生成AI市場規模は指数関数的に成長すると予測されており 、この技術革新を適切に捉えることができれば、業務の生産性を飛躍的に向上させ、都民の生活をより豊かにすることが可能になります

背景③:国内外でのAIルール作りや活用の加速

国(日本政府)や海外の主要国・都市においても、AIに関する戦略策定やガイドライン整備が急速に進んでいます 。東京都としても、こうした国内外の動向と歩調を合わせ、戦略的にAI活用を進めていく必要がありました

「東京都AI戦略」が目指すもの

この戦略は、東京都が目指す2050年の未来像を示した「2050東京戦略」の実現を加速させるための、強力な「手段(技術・ツール)」として位置づけられています 。

戦略の2つの視点

  1. 都政におけるAI利活用: 都民サービスから職員の内部業務まで、都政のあらゆる側面でAIを徹底的に利活用する。
  2. 多様な主体とのAI利活用促進: 東京の産業成長とイノベーションを牽引し、社会全体のAI活用と人材育成を推進する。

最終的な目標

AIを徹底的に利活用することで「都民サービスの質向上」と「業務の生産性向上」を図り、都民のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)向上を実現することを目指します。

都政はAIでどう変わる? – 5つの基本方針

東京都は、AIを都政で利活用するにあたり、以下の5つの基本方針を掲げています

  1. 都民の利便性向上・QOL向上の徹底: AI活用は、常に都民のQOL向上を第一義とする。
  2. 政策実現の手段としてのAI利活用: AI導入自体を目的とせず、あくまで政策課題を解決するための有効な「手段」として活用する。
  3. 人間中心のAI利活用: AIは人間の能力を補完・拡張するものであり、最終的な判断や責任は人間が担うことを原則とする。
  4. リスクへの適切な対応: AI活用のリスク(倫理性など)を理解し、都民が信頼できるAI利活用を図る。
  5. オープンイノベーションの推進: 大学や民間事業者など、外部の先進的なAI技術や知見を積極的に取り入れ、連携・協働を進める。

3つの業務領域とAI活用の分類

都庁の業務は、AI活用のために以下の3つの領域に分類されます

  • 都民サービス: 申請・通知や窓口での問い合わせなど、利用主体が都民・事業者であるサービス 。
  • 都民サービス関連業務: 補助金の審査やインフラ維持管理など、利用主体は職員だが最終目的が都民サービスとなる業務 。
  • 職員内部業務: 文章作成や分析など、都民サービスに直接影響しない職員の内部業務 。

さらに、これらの業務領域ごとに、AIの技術的な機能を踏まえた5段階の利活用分類(情報提供・検索、行動支援など)が設定されています

AI利活用における6つの留意事項

AIを利活用する際には、都民・事業者からの信頼と共感を得るため、特に以下の6つの事項に留意する必要があるとしています

  • 透明性: AIがどのように機能し、なぜその決定に至ったのかを理解・説明できるようにする。
  • 公平性: AIモデルの偏見(バイアス)によって、特定の個人や集団が不当な差別を受けないようにする。
  • 安全性: AIの誤作動などにより、人間の生命・身体・財産などに危害を加えないようにする。
  • プライバシー: 個人情報の不適切な収集・利用・漏洩などが起きないようにする。
  • セキュリティ: サイバー攻撃などに備え、不正操作による意図せぬ動作を防ぐ。
  • アカウンタビリティ(説明責任): AIが予期せぬ結果を引き起こした場合に備え、責任の所在を明確にし、後から検証できるようにする。

都民・事業者との連携強化

この戦略では、都庁内での活用だけでなく、社会全体のAI活用を東京都が牽引していくことも重要な柱とされています。

産業の成長とイノベーション

東京、ひいては日本のAI開発力・競争力を底上げするため、民間企業や大学、研究機関との連携を強化します

  • 中小企業の生産性向上: AI等の技術活用を促進し、中小企業のDXを支援 。
  • データ利活用環境の整備: 民間事業者が行政データを活用し、AIを用いた新サービスを創出しやすくなるよう、データの整備・提供を推進 。
  • スタートアップとの協働: 「SusHi Tech Tokyo」などを核に、スタートアップへの実証の場の提供など社会実装の機会を創出 。
  • 産官学連携の推進: 都が大学、研究機関等と連携し、都市課題の解決に向けた共同研究開発を推進 。

社会全体のAI活用と人材育成

AIの恩恵をすべての都民が享受できるよう、社会全体のAIリテラシー向上と多層的な人材育成を推進します

  • 多様なAI人材の確保・育成: 高度専門人材の育成や、社会人のAI関連スキル習得(リスキリング)支援、行政職員の人材育成などを実施 。
  • 都民のAIリテラシー向上: AIの利便性とリスクの両面を理解できる情報発信や、高齢者等を対象にした学習機会の提供などを展開 。
  • 教育現場におけるAI活用推進: 全都立学校で生成AIを日常的に活用できる環境を整備し、生徒等の思考力やAIリテラシーの習得を支援 。

東京都の推進体制と主な取組み

戦略を着実に実行するため、東京都は強力な推進体制を構築します。

マネジメント体制と3つの柱

都庁全体を統括し、各局のAI利活用を後押しするため、

政策、財務、技術の3部門が連携するマネジメント体制を構築します

推進にあたっては、以下の3つの柱に沿って様々な取組を展開します

  1. 全体統括: 都の全AI関連事業の把握や、利活用ガイドライン等の策定を推進。
  2. 各局サポート: 職員のリテラシー向上研修や相談窓口、共通ツール・生成AIプラットフォームを提供。
  3. 国・区市町村・民間等との連携: 国の方針との整合性を図り、区市町村とも密に連携。

具体的な取組

  • 利活用ガイドラインの策定: 各局の課題解決のため、効果的な利活用事例や留意事項への対応等をまとめたガイドラインを策定・更新します 。
  • 職員向けサポート: AIリテラシー向上研修や庁内相談窓口を設置し、職員をサポートします 。
  • 共通ツール等の提供: AIによる議事録作成支援ツールや、セキュアな環境で利用できる生成AIプラットフォームを各局へ提供し、利活用を促進します 。

まとめ

「東京都AI戦略」は、AIを都政の強力な推進力として明確に位置づけ、都民のQOL向上と持続的に成長する東京の実現を目指すものです。

  • AIへの向き合い方: 人口減少などの課題に対応し、技術革新を捉えるため、「2050東京戦略」実現の手段としてAIを活用する。
  • 都政での利活用: 人間中心の基本方針のもと、都民サービスから内部業務まで3つの領域でAI活用を推進。リスクにも適切に対応する。
  • 多様な主体との連携: 産業競争力の強化、スタートアップ支援、都民のAIリテラシー向上など、社会全体でAI活用を促進する。
  • 推進体制: 政策・財務・技術の3部門が連携するマネジメント体制を構築し、「全体統括」「各局サポート」「外部連携」を3つの柱として強力に推進する。

この戦略は、AIという変革の波を乗りこなし、より良い未来を築くための東京都の強い意志を示しています。今後、この戦略がどのように具現化されていくのか、注目が集まります。

東京都AI戦略の資料について

資料は東京都デジタルサービス局ホームページから閲覧いただけます。
https://www.digitalservice.metro.tokyo.lg.jp/business/ai/ai-strategy

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